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鳥類標本3000点 科博へ 林正敏さん寄贈

2024年5月14日


 日本野鳥の会諏訪支部名誉支部長の林正敏さん(80)=岡谷市川岸東=が今夏、45年間自宅で保管してきた約3000点の鳥類標本を国立科学博物館(茨城県つくば市)に寄贈する。「ほとんどの鳥が捕獲できた明治、大正期の標本。大半の種が現在は捕獲できない保護鳥で、二度と入手ができない貴重なもの」(林さん)という。同博物館への搬送前に地元の人たちに見てもらうため、6月8日(土)〜7月7日(日)の1カ月間、原村の八ケ岳美術館で開く企画展で全ての標本を展示する。
 標本3000点の内訳は、鳥類242種2391点、獣類12種59点、鳥卵550点。標本は一般展示用のはく製ではなく、学術研究用の仮はく製として丁寧な処理が施され、100年以上経過しても羽毛の色彩は色あせていない。
 林さんはこれらの標本を二つのルート、4人の関係者から寄贈を受け、自宅で保管してきた。一つは明治、大正期の農商務省時代に、主に鳥獣行政の一環として食性調査に役立てるため、鳥獣調査員の立場で鳥を捕獲した松本市の高山鼎二と子息の忠四朗、他方は上諏訪町長の傍ら高山チョウの研究者で諏訪湖の鳥類も調べていた金井汲治と、子息で戦後初の諏訪市長を務めた金井清の4氏(いずれも故人)。
 1979(昭和54)年に、県自然環境保全審議会の委員だった日本野鳥の会諏訪支部初代支部長の小平萬栄さんが、同じ審議会委員だった高山忠四朗から、自宅で保管していた1700点余の標本の保管先について相談を受け、標本類に強い関心のあった林さんが寄贈を受けた。この標本は北アルプス一帯をはじめ県内各地で採集したもので、ライチョウ9点が含まれている。
 この「高山標本」の寄贈を受けた後、諏訪教育会館で博物資料として保管されてきた「金井標本」が林さんに寄贈された。1800年代の古い標本や大型猛禽類のはく製、1893年に諏訪市湯の脇で採集したオオワシなど670点ある。
 林さんはこれまで、長く解説者を務めた塩嶺小鳥バスや講演などで一部の標本を持参して紹介したり、地元の橋原公民館で展示会を開いたりしてきた。自身が高齢となり、「恒久的な有効活用が最大の懸案」と考えていた林さんの相談を受けた信州大学理学部助教で鳥類研究者の笠原里恵さんの仲介で、科学博物館への一括寄贈が決まった。
 寄贈を前に八ケ岳美術館で開く企画展では全ての標本に加え、高山標本と一緒に寄贈を受けて保管していた生物画家、小林重三(しげかず、1887〜1975年)の「信濃稀産鳥類」の軸画、鳥卵標本の製作道具なども展示する。林さんは「貴重な標本は過去から未来への宝物。地元の人に見てもらった後は、国の財産として有効に活用してもらえれば」と話す。
(写真は、林さんが保管してきた鳥類標本)