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辰野町小野の建造物3件国登録有形文化財に

2024年3月16日


 いずれも辰野町小野にある旧小澤家住宅(油屋)の主屋と薬医門、下町の火の見やぐらについて、国の文化審議会は15日、国登録有形文化財にするよう文部科学大臣に答申した。答申通り告示されれば町内の登録有形文化財は7件となる。県教育委員会によると、県内で火の見やぐらが登録されるのは初めてという。
 油屋は小野宿が栄えた伊那街道沿いにあり、江戸時代に旅籠(はたご)を営んだ。1859(安政6)年の大火で失われたものの、61(万延2)年に再建。木造一部2階建てで、登録対象の延べ床面積は312平方㍍。本棟造りが用いられ、棟の頂部に雀(すずめ)踊りという飾りがあり、広い式台玄関も備える。表門の薬医門は切り妻造りで鉄板葺(ぶ)きの屋根を持ち、勇壮な構えだ。
 国道を挟んで向かいにある県宝の小野宿問屋や隣接する小野宿酒屋と共に小野宿の特徴的な景観を形成する重要な建物。所有者の死後、相続人によって2017年に町に寄贈された。地域住民有志でつくる保存会が維持管理に努め、地域の交流施設としても活用されている。
 保存会の小澤晃会長(70)=小野上町=は「これを機に小野宿や油屋に注目が集まればうれしい。施設の活用も更に進むといい」としている。
 火の見やぐらは、鉄骨造で高さは17㍍。旧雨沢村(小野雨沢)が地域にあった鉄工所と契約し、1955年、小野宿の入り口に当たる「小野下町」交差点近くに建造した。頂部から脚部にかけてなだらかなカーブを描いて末広がりになっており、東京タワーのような見た目が特徴。脚部には強固な骨組みの「トラス構造」が見られる。
 一級建築士で県内外の約1500基の火の見やぐらを研究してきた平林勇一さん(70)=朝日村=は、下町の火の見やぐらの形状について「力学的に無理がなく合理的で、安定感がある」と評価。見張り台とピラミッド型の屋根の大きさのバランスも良く、「これまでに見てきた中で一番美しい」と太鼓判を押す。
 全国に登録有形文化財は約1万4千件あるが、平林さんによると、鉄骨造の火の見やぐらの登録は5件とわずか。地域のランドマークである下町の火の見やぐらが県内第1号として登録されると「住民からの認識が変わる」とし、「ほかの市町村でも主だった火の見やぐらを撤去せずに残す動きが出てくれば」と期待を込める。
 登録有形文化財になる見通しの3件全てが小野宿にある建造物。既に登録済みの町内4件のうち3件も小野宿に関連がある。町教育委員会は「新たな登録によって町内外の多くの人が小野宿に関心を持ち、町並み保存について深く考える切っかけになれば」としている。
 今回、県内では町の3件を含む12件を登録有形文化財にするよう答申された。県内の登録有形文化財は639件となる。
(写真は、登録有形文化財に登録される油屋や下町の火の見やぐら)