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「御神渡り」題材作品 タイ映画祭で最高賞

2024年2月20日


 諏訪湖の氷が割れてせり上がる自然現象「御神渡り」を題材にした映像作品が、タイ・バンコクで18日まで開かれた国際映画祭のドキュメンタリー部門で、最高賞の「審査員大賞」を受けた。御神渡りの観察と記録、判定を担う八剱神社(諏訪市小和田)宮司で、撮影に協力した宮坂清さん(73)は「地球規模で気候変動が叫ばれているが、その中でこのような賞はうれしい。582年分が記録され、先人が残した『御渡帳』は宝物だと改めて思った」と喜ぶ。
 作品は「御渡り/MIWATARI」とし、国際環境団体グリーンピースジャパン(東京都)が制作。同団体によると、宮坂さんの協力で昨年7月、八剱神社で撮影し、当初はアート作品とする予定だったが、同団体プロジェクトマネジャーの高田久代さんは「作品をこのままにするのではなく、宮坂さんの言葉を世界のより多くの人に伝えたい」との思いで、短編映画を通じて気候変動を考える「Changing Climate,Changing Lives Film Festival」(CCCL祭)へも出品した。
 作品は11分。室町時代の1443(嘉吉3)年から582年続く観察記録の歴史を織り交ぜながら、御神渡りが出現しない「明けの海」が1950年以降に著しく増加していることや、湖や漂流するごみや気候変動の影響を受ける状況に、宮坂さんが「自然に対して自然と生きなさいと『明けの海』が警鐘を鳴らし、人間に知らしめていると考えざるを得ない」などと語りかける内容。動画は動画共有サイト「ユーチューブ」の同団体チャンネルで公開している。
 宮坂さんは18日午後10時半ころ、受賞の連絡を受けたといい、「地球規模の気候変動を、諏訪湖の御神渡りを通じて人々と自然との関わりをシンプルな内容と表現でまとめてくれた。作品を通じ、一人一人が温暖化に対して何ができるかを考える切っかけになれば」と期待する。
 同団体の高田さんは「文化も言語も違う中で、多くの人の心に響いて光栄。宮坂さんの言葉を通じ、見る人が少しでも気候変動や温暖化などの影響に思いを巡らせてもらえたら」とのコメントを寄せた。
(写真は、グリーンピースジャパン制作の映像作品「御渡り/MIWATARI」のワンシーン)