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「明けの海」神前に 八剱神社で「注進奉告祭」

2024年2月18日


 諏訪湖面を覆った氷がせり上がる「御神渡り」の判定と神事をつかさどる諏訪市小和田の八剱神社で17日、今季の結果を神前に伝える「注進奉告祭」が営まれた。宮坂清宮司(73)=諏訪市小和田=は6季連続で御神渡りがない「明けの海」となったことを奉告するとともに、世界各地で起こる災害なども念頭に穏やかな世の中になるよう願った。
 今季の観察は1月6日の「小寒」から始まった。薄氷は度々見られたが、翌日には湖面の氷は解け、波立つ日が続いた。二十四節気で最も寒いとされる「大寒」の同20日も氷はなく、その後も結氷と解氷が続き、「立春」の4日に観察の区切りを付けた。
 奉告祭に先立ち、同神社に仕える「諏訪八剱太鼓保存会」が奉納演奏。神事には氏子総代や古役代表ら約40人が参列した。宮坂宮司は拝殿で「薄氷(うすひ)張るのみにて、また寒の中に5度3日、雨降り。寒気続かず、小波打ち寄(よ)する明けの海にて、神渡り御座無く候(ござなくそうろう)なり」と奉告した。
 神事終了後、境内では御神渡り出現時に拝観式で使う予定で準備していたしめ縄35本を焼く「お焚(た)き上げ」も行われ、参列者は燃え上がる炎を見守った。
 宮坂宮司は「6年続く明けの海で自然がならす警鐘に、自分たちには何ができるかと考えざるを得ない」とし、世界で起きる干ばつ、洪水、氷河融解などに触れて「諏訪湖の氷の現れ方も物語っている」とし、ことしについては「元日の地震のことを思うと、穏やかな地球であってほしい」と願った。
 大久保一大総代(73)=同市杉菜池=は「3年の任期の中で、御神渡りが一度もできなかったのは残念」と肩を落としつつ、「観察で感じたのは関心の高さ。湖に、たくさんの観光客に来ていただき、冬の諏訪湖の風物詩になっていることはありがたい。私たちの役目は次の総代に託し、近い将来、御神渡りの拝観式があった時には参列したい」と話した。
 同日、総代らは諏訪大社上社本宮に出向き、御渡り注進式に臨み、「注進状」を奉奠(ほうてん)した。(写真は、拝観式で使う予定のしめ縄を炊き上げる関係者ら)