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7000年前の暮らし考察—阿久遺跡のガイド作成—

2023年10月31日


 大昔調査会(高見俊樹代表理事)は縄文時代前期の大遺跡で国史跡、阿久遺跡(原村)にスポットを当てたガイドブック「阿久遺跡 大遺跡阿久から7000年後へのメッセージ」を作成した。噴火、大地震、縄文海進などの天変地異と、同遺跡でたくましく生き抜いた人々の姿を重ねながら考察した。
 八ケ岳美術館(原村)が来年1月8日(月=祝日)まで開く「返還記念企画展 縄文前期の巨大祭祀(さいし)場 阿久」と連動、本年度の県地域発元気づくり支援金事業「知られざる大遺跡・阿久遺跡」事業の一つとして刊行した。A6判、28㌻で、1500部作り、同展開催期間中、同館で希望者に配布する。
 同遺跡は7000年前〜6000年前の約千年にわたって存在した。定住生活の定着、石造構築物遺構の出現、装身具の発達、漆工芸の開花など、同遺跡発見はそれまでの考古学界の常識を覆し、縄文前期観を転換したとされる。
 同会副理事長の三上徹也さん(67)=岡谷市天竜町=が執筆した。ガイドブックではタイムラインに沿って各時代を紹介する。当時の縄文人たちが移動せざるを得なくなった7300年前に鹿児島で起きた鬼界カルデラの噴火。阿久Ⅱ期、この山岳地帯に突然大きなムラが出現したことに触れ、「自然増加では説明しにくい、(噴火が)急激な人口増加の背景では」と結び付けた。
 Ⅱ期の終わり頃には、近くの阿久尻遺跡からその痕跡が確認される茅野断層による大地震が起き、空白期が生まれた。「ムラが放棄された可能性をうかがわせる。以後は、祈りにすがる祭祀の活発化もうなずける」と記す。
 このほか、遺跡のデータ、住環境や土器の変化、男女別の視点から見た道具の違いなども知ることができる。三上さんは「7000年前の人々の暮らしを感じ取ってもらい、遺跡への思いを深めてもらえたら」と話す。
(写真は、ガイドブックと執筆者の三上副理事長)