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生糸輸出の記憶追体験 岡谷→横浜 日本版「シルクトレイン」の旅

2023年10月23日

千葉の美術家夫妻がアート列車仕立てて

 岡谷市内に滞在しながら、芸術家に創作活動をしてもらう市の「アーティスト・イン・レジデンス」事業の一環で制作された日本版「シルクトレイン」が22日、JR岡谷駅を「出発」した。千葉県市川市在住の美術家・松本春崇さん、角田良江さん夫妻が一緒に仕上げた参加者の思いと共に特急列車に積み込み、乗り換えを経て無事にかつての横浜駅があった現在の桜木町駅(横浜市)に到着。鉄道で生糸を岡谷から横浜まで運び、そこから世界へと輸出した先人の記憶を追体験した。
 往時、世界一の輸出生産量を誇った岡谷の生糸を輸送するため、中央本線が開通。横浜港から米国シアトルなどに輸出され、更に同国東部に運んだ列車が「シルクトレイン」と呼ばれたという。松本さんらは岡谷から横浜まで生糸を運んだ列車もまた日本版「シルクトレイン」とし、市の事業に参加して一般参加者と共にアート列車を仕立てた。
 列車は段ボールに繭袋をかぶせ、参加者が色をつけたり絵を描いたりした。先頭車両には繭やカイコガの形をイメージし、シルクをオリジナルの「蚕結び」にして飾った。
 2人は岡谷駅から特急列車に乗り込み、横浜線への乗り換えの八王子駅でサポーターと合流。「電車ごっこ」の要領でシルクトレインを身に着け、写真を撮ったり、旧横浜港プラットホームや線路跡を散策したりした。
 松本さんは「岡谷と世界の交流の痕跡を残す繭袋や、シルクを使って素晴らしい作品が出来上がった」と喜び、角田さんも「『ジャパニーズシルクトレイン』の記憶を掘り起こし、未来につなげていきたい」と語った。(写真は、〝出発〟前に「シルクトレイン」を並べて撮影などをする松本さん=左=と角田さん。先頭車両にはオリジナルの「蚕結び」の飾りも)