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武井武雄全国から注目 県外の美術館で展示会多数

2023年7月21日

うえぶ武井ぽすた
 岡谷市出身の童画家・武井武雄への注目が全国的に高まっている。神奈川近代文学館(横浜市)で企画展「本の芸術家 武井武雄展」が行われているほか、静岡県、北海道の美術館でも展示会が控えていたり、開催されたりしている。各館での展示作品の多くを貸し出すイルフ童画館の山岸吉郎館長は「プロの中では根強い人気があり、『知る人ぞ知る』だった武井の存在が徐々に一般的になりつつある。時代の風がだんだん武井に吹いてきている」と話し、更なる広がりに期待を寄せる。
 山岸館長によると「各館の若い学芸員からの展示リクエストが多い」といい、マイナーだった絵本や童画への理解が深まったほか、「今の時代にも新しさを感じる武井作品に対しての敏感さがあるのでは」と分析。加えて、2014年の生誕120年を記念した全国の巡回展、関連書籍の刊行が後押ししたとみられる。
 神奈川近代文学館の企画展は、造本家としての武井に焦点を当て、詩文や絵、印刷技法に至るまでこだわり抜いた装丁で「本の宝石」とも呼ばれる刊本作品を中心に展示。武井作品の所有者遺族から寄贈された約1800点に加え、童画館が貸し出したタブロー(一枚絵)、版画、刊本作品の素材となった色見本など149点を並べる。これまで同館でしか公開していない作品も含まれているといい、首都圏など遠方の人により深い武井の魅力を伝えている。
 来年には武井の生誕130年を控え、「記念に向けて積極的に動いている」と同館職員。学芸員は「武井作品を知らない人は多いが、たくさんの人に魅力を感じてほしい。そこから童画館に来てもらい、ほかの作品も見て、輪が広がっていけば」と期待を込める。
 神奈川近代文学館は23日(日)まで。武井の手芸図案が取り上げられた巡回展「糸で描く物語」は、これまでに韓国南楊州市現代子ども美術館、新潟県立万代島美術館(新潟市)などで開かれ、25日(火)からは静岡県立美術館(静岡市)で実施。北海道立旭川美術館(北海道旭川市)では8日から刊本作品に焦点を当てた展示が開催されている。刊本作品や版画、刺しゅう図案など幅広い画業が多くの人の目に触れることになり、更に武井武雄の知名度が全国で高まりそうだ。
(写真は、神奈川近代文学館で開かれている武井の展示のポスター)