NEWS

「信州文学館(仮称)」建設を 下諏訪で記念講演会

2017年10月30日

信州文学館
 「信州文学館(仮称)」設立推進会は29日、下諏訪商工会議所で記念講演会と大会を開いた。県内に文学研究や資料収集の拠点となる総合的な文学館を建設するため、住民機運を盛り上げようと開催したもので、諏訪地方ゆかりの数学者でエッセイストの藤原正彦さんが講演した。
 設立推進会は昨年7月、文芸評論家の東栄蔵さん(長野市)ら9人の発起人で設立、同10月に設立記念講演会と総会を県立長野図書館で開いた。県内には個人の文学者や出版人らを顕彰する文学館や記念館はあるが、信州の文学全体を語れる施設がない—と県教委に県立文学館設置を要望。趣旨に共鳴する賛同人の一人、「サロンしもすわ」代表の樽川通子さん(御田町下)の働き掛けで、下諏訪町での記念講演会と大会が実現した。
 事務局長の中西満義県国語国文学会長(上田女子短大教授)は講演で「文学というものを通し、人と人とが集える場が必要。無機質なものではなく人々が集える施設、できれば県立が望ましい」と話し、信州の豊かな文学風土を、次の世代へ伝えていく場づくりを求めた。
 発起人の一人で、現代俳句協会長の宮坂静生さん(俳人)は「信州には個別的な文学館はあるが、全体を統括するものがない。個々を光り輝かせるために、文学館は必要だ」と来場者に訴えた。大会ではNPO県図書館等協働機構理事長の宮下明彦さんが、信州の文学風土を伝えていく館の在り方として、市民協働の運営について話した。
 記念講演会で講師を務めた藤原さんは、諏訪市出身の作家新田次郎と茅野市出身の作家藤原ていの二男。「故郷信州と父、母そして私」と題し、気象学者としても活躍した父や、満州(中国東北部)からの引き揚げを題材にした小説「流れる星は生きている」が、ベストセラーになった母の思い出も交えて話し、来場者の関心を集めた。