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辰野町小野宿の「油屋」 所有者の遺族が町に寄贈

2017年6月29日

小野宿油屋

 小野宿の町並みを形成する主要な建物で、江戸時代後期の建築物とされる古民家「油屋」が28日、辰野町に寄贈された。所有者の女性が5年前に亡くなり、相続人の親族が地元の要望に応えて「町並みを残すためなら」と土地、建物の寄贈を申し出たもので、町は、地元住民と相談しながら活用方法を考えたいとしている。
 小野宿問屋(県宝)の道向かいにある「油屋」は、江戸時代に旅籠(はたご)を営んでいたといい、1859(安政6)年に小野宿が大火に見舞われた直後に再建されたとみられる。
 旅籠だった母屋は木造2階建て約348平方メートル、裏手には土蔵(約35平方メートル)と、後年増築した居住スペースがある。母屋は真向かいの小野宿問屋や隣接する古民家と同じ本棟(ほんむね)造りで、この3軒が居並ぶ景観は小野宿の特徴的な姿とされる。
 所有者だった女性は、夫が1987年に亡くなった後、一人で古民家を守ってきたが、2012年2月に86歳で死去。女性の親族が相続人となり、後片付けなどを行ってきた。
 28日は相続人を代表し、東京都小平市に住むおい、山梨県中央市に住むめいが来町。加島範久町長に目録を贈呈した。
 2人は「地元の方から残してほしいと強い希望があり、私自身も残したかった。今これだけの建物を造ろうと思っても、造れるものではない。後世の方々にぜひ見ていただきたい」「すごくこの家を大事にしていた。地元の皆さんが大切にしてくだされば、本人も喜ぶと思う」としのんだ。
 地元では、油屋の保存活動をしようと有志が立ち上がっており、加島町長は「小野宿を象徴する貴重な建物を形として残せるようになり、大変ありがたい。大事にしていきたい」と感謝した。

(写真は本棟造りの油屋の外観)