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短編映画「SUWA」を製作 大昔調査会が女性の力結集
2025年9月6日
一般社団法人大昔調査会(諏訪市)は、昨年10月に石彫公園(同)で公演した諏訪湖ゆかりの人形浄瑠璃文楽「本朝廿四孝(にじゅうしこう)奥庭狐火の段」の物語を軸に、諏訪地域の風土や魅力を収めた短編映画「SUWA」を製作した。同調査会の髙見俊樹理事長(68)=同市=は「文楽を切り口に、地域の魅力を伝えたいと進めてきた映画。作品を見て地域の良さを感じてほしい」と話す。
映画は同演目を切り口に、現代に生きる老婦人の目線に諏訪地域の歴史、文化、風土を重ねていくドキュメンタリー。諏訪の人々が大切にしてきた神仏信仰や自然との関わり、死生観、脈々とつないできた命の営みを女性の視点で描き、約17分間の映像にした。
監督は、諏訪大社の神事から諏訪の精神風土に迫るドキュメンタリー映画「鹿の国」を手がけた弘理子さん(東京都)。脚本は女優で脚本家の近衛はなさん(45)、ナレーションはフリーアナウンサーの小林節子さん(80)=原村=、音楽は「RABIRABI」のボーカル、az3(アズミ)さん(56)が3曲を提供するなど女性の力を結集し完成させた。
「本朝廿四孝奥庭狐火の段」は、諏訪湖の湖面が凍ってせり上がる自然現象「御神渡り」を舞台に、八重垣姫がいいなずけの武田勝頼の危機を救うため冒険を繰り広げる恋物語。映画は八重垣姫の所作からスタートし、諏訪大社御柱祭や下社春宮の筒粥神事、地域の行事などの映像に移り変わりながら諏訪の信仰や歴史、死生観、命のつながりなどを垣間見せる。地元の矢﨑はる江さん(83)=岡谷市=も作品の象徴的な場面で老婦人役として出演し、見る人を物語の世界へ引き込む。
弘監督は「山から降りてくる力を持ってくるのが男性。それを受けているのは多くが女性で、水平と垂直の交わりを意識し、さまざまな時代、空間、存在などが諏訪の中で交錯するイメージを出そうと描いた」と振り返り、「これまで見たことのない諏訪を撮ろうと、冬だけで勝負する映像に挑戦した。八重垣姫の赤と白を含めて静かな諏訪の冬、白い諏訪をイメージできた」とする。
「SUWA」は動画共有サイト「ユーチューブ」で無料公開している。(写真は完成を喜ぶ弘監督=左から3人目=ら女性製作陣)