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昔話再話集を刊行 山梨・茅野昔ばなし大学再話研究会
2025年8月25日
「山梨・茅野昔ばなし大学再話研究会」(鈴木和代代表)がこのほど、昔話再話集「むかしむかし山梨・茅野」を刊行した。昭和初期などに出版された昔話集を「原話」とし、本来の単純で明快な語り口を守った昔話として「再話」した計38編を所収。研究会では、現在の子どもたちに分かる言葉で「再話」することで、地域に根差し、伝承されてきた昔話を子どもたちに読んでほしいと願いを込めている。
同研究会発足の切っかけは、ドイツ文学者で「小澤昔ばなし研究所」を主宰する筑波大学名誉教授の小澤俊夫さん(95)が全国各地で開く「昔ばなし大学」のうち、2000年に開講した「茅野昔ばなし大学」と07年に開講した「山梨昔ばなし大学」。
両大学とも3年間の基礎コース、2年間の再話コースを経て茅野は06〜15年、山梨は12〜15年にそれぞれ「昔ばなし再話研究会」として学習を重ねてきた。継続する中で、家庭の事情などで退会を余儀なくされるメンバーもいて単独での研究会運営が難しくなり、地理的に近いことなどから16年に合併した。現在は8人のメンバーが参加している。
刊行した再話集には、「山梨のおはなし」として、世界一の大きさ自慢をする「大鳥と大えびと大がめ」、盗みを戒める「あま柿しぶ柿」など18編を収録。「長野・伊那谷のおはなし」として、仁王門に立ってばかりで退屈な仁王が遊びに出て、糸繰りをするおばあさんのおならを笑い、「臭う(仁王)か」と聞かれてあわてて逃げ帰る「仁王さまの夜遊び」、飯田の名物と梨にまつわる「なしの木のはなし」など17編を収めた。ほかに、山梨・茅野研究会合併後、茅野研究会に所属していたメンバーが取り組んだ海外の昔話再話として、中国の苗族(みゃおぞく=原書表記)に伝わる昔話を3編収録した。すべて小澤さんが監修している。
「刊行の言葉」で小澤さんは、「昔話の語り口の研究が進んでみると、お年寄りの語りは、実は耳で聞かせるために研ぎ澄まされたものであることがわかった」と、「再話」の意義を指摘。その上で「原話として使うことを承諾してくださったもともとの調査者、研究者の方々のおかげで本書ができた。後世に残すべき日本人の共有財産として、大変な努力と苦労を重ねて蒐(しゅう)集された貴重な資料。それを現在の子どもたちの耳に届けられるようにしたい、という私たちの気持ちを理解してくださったことに感謝します」と寄せている。
A5判157ページ。書店には置かず、会員が1冊800円で頒布している。
同研究会では、30日(土)午後2時から岡谷図書館で掲載作品の語りの会「むかしむかし 山梨・茅野」を開く。頒布や語りの会に関する問い合わせは会員の高木さん(電0266・22・1965)へ。(写真は刊行した再話集と研究会メンバー)