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「日本最小」ハッチョウトンボの羽化ピーク 伊那市「トンボの楽園」
2025年6月19日
伊那市富県新山地区の湿地帯「トンボの楽園」で、日本最小のトンボ「ハッチョウトンボ」が羽化のピークを迎えている。ことしは近年で最も発生数が多く、体長2センチほどのトンボを8月中旬まで観察できる。
ハッチョウトンボの雄はオレンジから赤色で、成熟すると色が濃くなる。雌は茶褐色のまだら模様。一帯を管理する「新山トンボの楽園を育てる会」によると、ことしは平年同様の5月中旬に羽化を確認。今月中旬から個体数が増えており、発生数のピークは7月上旬を見込む。
連日、昆虫愛好者らが観察や写真撮影に訪れており、17日も水辺の草に止まるトンボにカメラを向ける姿が見られた。数年ぶりに来たという岡谷市の男性(65)は「小さくて写真を撮るのは難しいけれど、限られた場所にしかいないので撮っていて楽しい」と話した。
同会はこれまで保護活動をしていた団体の解散に伴い、2021年に発足。地元住民を中心とした会員約80人で、広さ約2ヘクタールの湿地の草刈りや遊歩道の整備などに取り組む。一帯では、年間を通して希少種を含む約30種のトンボが観察できるという。
北原幸人会長(74)は「ハッチョウトンボは微妙な環境の変化ですぐに個体数が変わってしまう」と保全の難しさを語る。水深の管理や適度な除草に細心の注意を払うが、発生時期の前後は「ことしは大丈夫かなと気になり、どきどきする」。ことしの発生数には安心したものの、毎日のように観察に訪れているという。
同会は7月5日(土)午前9時〜午後3時、ハッチョウトンボの観察会を開く。トンボに詳しい会員らが湿地を案内する。地元の農産物や飲食物の販売なども予定する。北原会長は「トンボの生態を観察したり、小さな生き物を通して豊かな自然を守る方法を考えたりしてほしい」としている。
参加無料。問い合わせは北原会長(電090・4598・1131)へ。
(写真は、羽を休めるハッチョウトンボの雄)