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「音楽の祭典」最終公演 35年の歴史に幕引き

2025年6月10日


 伊那市民らによる演奏会「クラシック音楽の祭典」の最終公演が8日、伊那市の県伊那文化会館で開かれた。伊那フィルハーモニー交響楽団と公募した祭典合唱団の計約150人が、ヘンデル作曲の「メサイア(救世主)」を演奏。前身企画から続いた35年の歴史に幕を下ろした。
 演奏会は、伊那谷にクラシック音楽の文化を根付かせようと「手づくりの演奏会」の題で1990年に始まった。2016年の第12回公演で幕を閉じたが、18年に復活。合唱団員をオーディションで決めるなどより高みを目指し、装いを新たにした。地域の音楽団体が増え、演奏技術も向上していることから最後にすると決めた。
 メサイアは演技を交えることなく、演奏によって物語を表現する「オラトリオ」の曲で、「ハレルヤ」の部分が特に有名。歌詞は旧約、新約聖書から引用した言葉を重ねており、イエス・キリストを賛美する。初回に演奏した曲でもあり、最後にふさわしいと選んだ。
 団員たちは美しい音色を奏で、観客を魅了。互いの演奏をたたえ合い、納得した表情でステージを後にした。合唱団の池上忠人団長(82)=南箕輪村=は第2回公演から9度出演。「合唱団がオケと共演できる貴重な場で、とても励みになった」と振り返る。「皆さんに良かったと言ってもらい、達成感がある。良い演奏会になった」と話した。
 会場には約1000人が詰めかけて耳を傾け、惜しみない拍手を送った。演奏会の立ち上げから携わってきた同館の北沢理光館長(76)は「何もないところから続け、伊那谷のクラシック音楽の文化が非常に豊かになったことをうれしく思う。今後は力を付けた各団体が進めてくれれば」としていた。
(写真は、35年の歴史に幕を下ろした最終公演)