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諏訪家伝来「源氏物語」翻刻終わる 市博物館でまとめの会
2025年6月2日
諏訪市博物館は昨12月から、市民協力55人と進めてきた、収蔵する高島藩諏訪家伝来の「源氏物語」写本全54冊の翻刻作成を終えた。1日、その成果を発表する「まとめの会」を同館で開いた。約20人が朗読や疑問点を独自で調べた結果などの報告と共に、貴重な活動に携わることができた喜びも伝えた。
諏訪家本は「こ少将の君」の手で書き写され、里村紹巴が調べた本と校合を重ねたらしい。紹巴の師である是斎が1607(慶長12)年に奥書を書いたと記されるが、奥書も含め後世に書き写された可能性もある。昭和時代後半に諏訪家から寄贈され、市図書館、市史編さん室を経て、平成初めに同館が収蔵する。
翻刻の協力者は、10歳代から70歳代まで幅広く、県外在住者もいた。1人1冊を原則に、諏訪家本の写真データと、当該部分の他本の翻刻資料を照合、表記の異同を確認して修正する作業を進めた。
まとめの会は、1人5分〜15分の持ち時間で発表した。都内の大学院で万葉集を研究する地元出身の女性はあて字の「両」について考察を進め、諏訪家本と同様の箇所で「両」が用いられる写本との比較などで「諏訪家本特有の表記ではない」として青表紙本系統であった可能性も指摘した。
書の経験から崩し字などに興味を持って参加した市内の男性は「判読できない箇所も当初はあったが、読み慣れてくるうちに見当が付くようになり、楽しくなった。源氏物語への興味も高まり、参加して良かった」と話していた。
写本には、是斎の字と見られる書き込みが多くあり、担当の三嶋祥子学芸員は手元に置いた写本が複数あったと推察。今後は書き込みの解読を進め、「多数の書き込みがされた本を豪華な装丁にした理由などを探りたい」としている。
(写真は、市博物館で開かれた「源氏物語」翻刻作成のまとめの会)