NEWS
下馬沢川の砂防堰堤が完成 25日式典 土石流災害の教訓伝える出発点に
2025年5月22日
2021年9月に茅野市宮川高部を流れる下馬沢川流域で発生した土石流災害を受け、県が築造を進めてきた砂防堰堤(えんてい)が完成した。場所は諏訪南行政事務組合が運営する火葬場「静香苑」近く。災害復旧工事も並行して進め、土砂や岩などを撤去。土石流の再発を防ぐため、堰堤から宮川の合流地点までの約1.3キロ区間に新たな護岸を整備した。25日(日)には完成式典を現地で行い、発災から3年8カ月が経過する中、集落を守る機能も果たす新たな施設の落成を祝うとともに、人的被害を出さなかった当時の教訓や、体験を改めて後世に伝えていく出発点とする。
土石流災害は21年9月5日、夕方から深夜にかけて高部区を中心に局地的に激しい雨が降り続いたことで発生。集落の上流付近で氾濫が始まり、周辺集落内の家屋などを押し流した。区民の迅速な自主避難や、区役員らの避難誘導などで人的被害を免れた一方、区内では全壊9棟、床上・床下浸水69棟の計78棟の建物が被害を受けた。
県諏訪建設事務所(諏訪市)整備課によると、新設した堰堤は部分透過型のコンクリート製。高さ12メートル、長さ112メートルで土砂の捕捉量は約2万4000立方メートル。大きな岩石と流木を受け止め、細かい石や木は流下させ、効率的に土砂を流す機能がある。巨石の衝撃も受け止められる仕様という。
災害復旧工事では、堰堤から宮川合流地点までの下流約1.3キロにわたり約1万1000立方メートルの土砂を除去。護岸工事とともに一部、川幅を拡幅する改良工事も行った。石積みだった護岸は全てコンクリートとし、川底には水の流速を抑える植石工を仕込んだ。
式典は午後3時半から市、工事関係者、高部区などが出席して現地で行う。同区、市、同事務所で刻む文章を共同で考え、堰堤築造に合わせて同事務所が設置した災害伝承碑の除幕式を行い、石碑につづられた当時の様子や爪痕、被災体験を確認して後世に伝える決意を新たにする。
(写真は、茅野市高部で発生した土石流災害を受け新たに建設した砂防堰堤)