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力を込めて龍渓石彫る 高遠高生が伝統の硯作り体験
2025年10月17日
高遠高校(伊那市)芸術文化コース書道専攻の2、3年生9人が、県の伝統工芸品「龍渓硯(りゅうけいすずり)」作りを体験している。すずりは、辰野町で採掘される「龍渓石」が使われているのが特徴で、地域の工芸に関心を寄せるのが目的。16日も彫刻刀で石を彫り、完成に向けて作業した。
体験は「総合的な探究の時間」の一環で、同校の非常勤講師で上伊那書道協会長の泉石心さん(66)が主に企画。龍渓硯の作家としても活動しているが、「作っているのは現在2人だけ」。現状を生徒に伝え、探究する機会になれば—と考えた。
生徒たちは今夏に学習を始め、すずりや石の特徴を学んだ後に作品作りに取りかかった。この日も泉さんの指導を受けながら墨汁をためる「海」や筆をならす「波止」などの部分を成形。柄の先端を肩に付け、体の重みも利用して彫り進めた。
今後は主に砥石(といし)ややすりを使って平らにする作業に取り組み、来年1月に予定する学習発表の場で、ほかの生徒に作品を発表する。2年の生徒は「手彫りなので時間がかかる。作品を見てもらい、伝統工芸の魅力を伝える」と話した。
泉さんによると、龍渓硯の硯工は多い時には約100人いたが、近年は減少。技術継承が思うようにできていないといい、泉さんは「上伊那地域に住んでいても、知らないという人は多い。まずは知ってもらうことが大切。将来に残していきたい」としていた。(写真は彫刻刀で龍渓石を彫る生徒)