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伊能忠敬隊に提供の下諏訪本陣献立で 実践女子大の学生が弁当開発
2025年10月9日
実践女子大学(東京都日野市)生活科学部食生活科学科食物科学専攻の学生2人が、江戸時代に精密な実測地図を作った伊能忠敬(1745〜1818年)が食べたであろう弁当を、当時の献立書を基に再現した「下諏訪宿本陣EDO BENTO(えど・べんとう)」を開発。下諏訪宿本陣・岩波家で8日、お披露目会が開かれた。伊能の測量隊が、本陣に滞在した際に提供したとみられる献立の古文書が開発の切っかけで、28代当主の岩波太佐衛門尚宏さんは、地域の観光振興に活用したい意向。
開発したのは、同学科調理学第二研究室に所属する4年生の小澤友唯さん(22)と山崎結花さん(22)。伊能の測量隊に提供した献立の再現に取り組む佐藤幸子教授の指導で、献立書に書かれていた食材に県の特産品を加え、更に岩波さんの「観光で訪れた人に提供したい」との思いをくみ取り、「観光客に提供できる弁当」をゴールに、卒論のテーマとしてレシピ開発に着手した。
献立書には食材だけが記載されており、2人は室町から江戸時代に至る料理文献をまとめた書物や料理書などを参考に、食材からレシピを導き出し、鶏の炭火焼き、ウナギのかば焼き、だし巻き卵、アワビの蒸し煮、ニンジンの甘煮など11品で構成する弁当にまとめた。お披露目会では本陣近くにある和食店「二十四節氣・神楽」店主の武居章彦さんが、色合いや味付けなどをプロの視点でアレンジして提供した。
伊能の測量隊は1809(文化6)年から11(同8)年にかけて行われた第7次調査の一環で、09年11月1日(和暦では文化6年9月24日)から4日(同9月27日)まで本陣に滞在し、諏訪湖や諏訪地域を4日間かけて測量。本陣に保存されていた古文書の中から、「9月24日」と日付だけ記された年号のない献立書が見つかり、有識者でつくる「岩波家を永遠(とわ)に守る会」会員らの橋渡しで、伊能の測量隊に提供した献立であることを突き止め、佐藤教授が料理の再現に取り組んできた。2024年2月、献立の一部を再現して本陣で報告会を開き、同年7月、献立の弁当部分を学生主体の地域連携活動として再現して発表した。
お披露目会には、佐藤教授と学生7人、守る会のメンバーらが出席。弁当を試食した小澤さんと山崎さんは「これを観光客の人たちに食べてもらい、下諏訪に来る人が増えれば」と期待。本陣EDO BENTOのほか、一部簡略化したテイクアウト向けの「伊能忠敬測量隊BENTO」、若者や学生にも江戸の食を体験してもらう軽食スタイルの「本陣EDO BENTO mini」も考案。miniは同大学カフェでの提供が決まっている。
岩波さんは献立再現の経過を振り返りながら、持続可能な取り組みとして諏訪地方の観光振興に役立てたい考えで、本陣や観光施設で、できれば来年度くらいから提供したい意向を示した。
(写真は、弁当を試食する右から佐藤教授、小澤さん、山崎さん)