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「神仏習合」で遺徳しのぶ 平福寺と正八幡宮 宗良親王640年慰霊祭
2025年9月24日
岡谷市長地柴宮の平福寺(小林崇仁住職)と正八幡宮(五十嵐輝宮司)は23日、南北朝時代を代表する歌人で、地元の東堀にゆかりが深いとされる宗良親王(むねながしんのう、1311〜85年ごろ)の640年慰霊祭を開いた。1868年の「神仏分離令」まで日本人の信仰として脈々と続いた神と仏を一体と考える「神仏習合」を、東堀からも発信していく思いを込め、五十嵐宮司が平福寺阿弥陀堂で祝詞を上げ、小林住職が157年ぶりに正八幡宮を正式参拝した。
宗良親王は「建武の新政」で知られる後醍醐天皇の第8皇子で、信濃を拠点に南朝勢力の再建を目指して各地を転戦した際に、正八幡宮に仮の御所を置いたとされる。平福寺は江戸時代を通じて正八幡宮の別当寺で、正八幡宮の神事や管理は住職が担っていた。神仏分離令で、宗良親王の護持仏とされる阿弥陀如来座像を安置する阿弥陀堂を正八幡宮から平福寺に移転し、両寺社の関係は絶たれた。
神仏習合が各地で見直される中、宗良親王にゆかりの深い両寺社が、親王が逝去して640年の節目に協力。平福寺の「おひぎりさま縁日」と正八幡宮の例大祭に併せ、祭りを楽しみながら地域の歴史と文化に親しみ、郷土の先人をしのぶ機会に—と企画した。
慰霊祭は平福寺阿弥陀堂で小林住職の読経と五十嵐宮司による神事の後、氏子と檀徒関係者ら60人が行列で正八幡宮へ向かう「神幸渡御(みゆきとぎょ)」。同神社では五十嵐宮司が祝詞を上げ、小林住職が玉串を奉納した。神事に続いて地元の長持と笠踊りに加え、宗良親王にゆかりのある富山県南砺市に伝わる「こきりこ節」が奉納された。
正八幡宮での慰霊祭神事を見守った地元の女性(81)は、「生まれも育ちも東堀。宗良親王のことは詳しくは知らなかったが、今回の慰霊祭を切っかけに知識が深まった。お寺とお宮が一緒に行うのは画期的なことだと思う」と話していた。
小林住職は「檀信徒や氏子の皆さんの協力で慰霊祭ができたことに感謝している。(正八幡宮への参拝は)貴重な機会になった」とし、五十嵐宮司は「できれば今後も一緒に宗良親王をおまつりしていくことができれば」と話していた。
(写真は、㊧平福寺阿弥陀堂で祝詞を上げる五十嵐宮司、㊨正八幡宮で玉串を奉納する小林住職)