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下諏訪町の旧矢﨑商店 国登録有形文化財に

2025年7月19日


 下諏訪町御田町にある昭和の生糸問屋、旧「矢﨑商店」の建造物について18日、国の文化審議会が国登録有形文化財にするよう文部科学大臣に答申した。昭和前期建設の店舗兼主屋と文庫蔵、納屋の3棟が対象。看板建築の主屋の希少性高い洋風の外観と、細部まで高度な技術を施した和風家屋が融合している特異性、町での製糸業隆盛を裏付ける建築であることなどが認められた。正式に決まれば、町内で昭和の建築が登録されるのは初めて。建造物の登録有形文化財は2例目となる。
 旧矢﨑商店の土地と建物は2022年度、移住交流総合拠点として活用しようと町が購入。改修、活用方針の検討組織で建物の特徴を生かすこととし、登録有形文化財を目指した。昨年度、信州大学工学部建築学科の研究室が価値を見いだすための調査を行い、結果を基に1月、登録の申請をしていた。
 いずれの建物も当主の矢﨑栄(1902〜60年)が建て、主屋は36年建設の近代和風建築。戦時下の45年、家屋の強制疎開で一部を解体した。一時は別の姿をした看板建築だったが、55年に増築して現在の洋風の外観になった。
 特徴的な外観はほかの看板建築にほぼ類似せず、国際的な最先端の建築要素を取り入れている。矢﨑が、当時の先端産業だった製糸業に従事していたことで西洋の流行を捉えられたとし、この関連性にも価値があるという。
 和風の部分には、意匠高い建具や壁の施工、伝統の形式にとらわれない創造的な座敷飾りなどがあり、高い技術による独自性ある建築が評価される。36年建設の文庫蔵は、数寄屋風の様相などが特徴。昭和前期に建て、30年ごろ改修した納屋には、主屋と関連付けたとみられる洋風の装いがある。
 町内で近代の文化財は少なく、町産業振興課文化遺産活用係は「昭和の建築的価値が認められ、一つ光が差すような感覚」と喜ぶ。宮坂徹町長は「歴史文化の薫り高いまちに、また一つ価値が増えた。中山道と甲州街道が交わる特徴から生まれた、江戸時代の『人の交差点』を実現できる場所にしたい」と話している。
 正式な登録決定は12月ごろを見込む。町は改修の設計を本年度、改修を来年度に予定。2027年度からの新たな活用を計画している。(写真は国登録有形文化財になる旧矢﨑商店の主屋)