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本紙投稿随筆を一冊に 尾玉の沖田泰三さん

2025年5月17日

 諏訪市尾玉町の沖田泰三さん(74)は、昨年10月まで2年余りにわたって本紙「読者の文芸」欄に掲載された随筆や詩78編と、新たな随筆などを加えて100編を収録した「雀百話語り」を自費出版した。投稿に一区切りにつけたいと決めての出版。「いつでも投稿をやめようと気楽に始めたが、声をかけてくれる人たちとの交流が終わると思うと頑張ることができた」と、出会いへの感謝を込めた。
 沖田さんは愛知県宇和島市出身。高校を卒業して大手旅行代理店勤務後、岡谷市内の染物工場で働いた。1979年からは諏訪市内の無認可保育所へ新たな道を求め、男性としては県内初の保育士資格を取得、園長まで務めて2004年に退職した。06年から6年間、諏訪市内の伊東酒造、14年からは関連の伊東近代美術館の案内人として従事する。
 「日々何かしら感じながら生きている今を、活字に残したい」と始めた投稿は、22年9月から24年10月まで月2回、文芸欄を飾った。この間、知人や面識のない人から手紙、電話などで感想が寄せられ、読者の存在を意識し続けたという。随筆「わらべ歌」が掲載された際には、辰野町内の読者から連絡を受けて資料を送ったのを機に、随筆が掲載される都度、電話をもらう交流も生まれた。
 執筆中は「今の自分を見つめ、心動かすものを見つめ、自分らしい表現とは」と問い直し、800字の制約下で1文字が惜しくて句読点を削り、数文字を足したりと苦心を重ねた。「一字一線」の中では「小説家や画家も一字を一線を大事にするために、ギリギリの選択をして修正する。修正の跡はそんな人物像を浮き彫りにさせる」とし、「書き残されたこだわりや、苦労の跡は、パソコン原稿では残せない」と心情を重ねた。
 著書はハードカバーのA4判304ページ。出版のために新たに筆を執った随筆22編や孫のために書いた童話のほか、デッサン画、油彩画も掲載。沖田さん自身の足跡を振り返る一冊にもなっている。200部作り、交流した読者にも配った。沖田さんは「文字に限らず、絵、立体など自分を表現できるものは何かを問い詰めている最中」と、向上心は衰えない。
(写真は、掲載作品とパソコンで打った原稿、推敲=すいこう=を重ねた紙原稿もファイルし、こだわりを貫いた沖田さん)