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武井作品年代ごとたどる イルフ童画館20周年「クロニクル展」

2018年4月9日

イルフクロニクル展

 岡谷市出身の童画家、武井武雄の作品を収蔵するイルフ童画館は、18日(水)に迎える開館20周年の目玉の一つとして記念展「武井武雄クロニクル展」を同館で開いている。初めて作品を年代ごとに並べ、山岸吉郎館長は「20年の研究成果の発表とする展示。これから研究者が増えていくに値するアーティストで、武井の実像をもっと深く知っていきたい」と話す。6月11日(月)まで。
 幼少〜青年、戦前、戦後などと四つのエリアに分けて展示。イルフトイスや刊本作品、版画など同館で行った作品展の中で、最も多い210点以上を飾る。戦争で焼失するなどして東京美術学校(現東京芸術大学)時代の作品はほとんど残っていない中、同大と交渉し、初めて武井が卒業制作の一つとして描いた自画像(1919年)を借りた。黒を基調とし、武井作品では希少な油彩で描かれる。
 幼少期から東京美術学校卒業まで水彩画を中心にいろいろな画法を試して西洋画家になろうとまい進していた頃、「ラムラム王」を出版してサインに「RRR」を使い始め、生涯で一番活躍していた1926年〜38年、母親や子どもが相次いで亡くなり戦争で作品が焼失するなどしたが、戦後の童画界を引っ張り再出発した時など、年代をエリアで分けて作品を紹介。88歳で生涯を閉じるまで、創作に向かい続けた姿を見ることができる。
 展示に当たり、学芸員も年代順で展示するためにいつの時代の作品かを調査。資料が少なく、ほかの人の資料で武井に関する記述を探すなどした。学芸員は「晩年でも決して陰りのない創作意欲が見て取れる。今回の展示で、武井先生の想像力の豊かさに改めて驚いた。同じ時期に抽象画と写実的な絵を描いており、どうしてそんなことができたのか研究を深めていきたい」と語る。
 水曜休館(4月18日は開館)、開館時間は午前10時〜午後7時。問い合わせは同館(電24・3319)へ。
 
(写真)初めてお目見えする学生時代の武井の自画像