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生糸格付け「セリプレーン検査」機械 製造の男性と対面

2019年11月4日

HPセリプレーン検査機械作者
 製糸業が隆盛を極めた時代、生糸の格付けに使われた「セリプレーン検査」の機械一式を製造していた岡本勇さん(81)=神奈川県逗子市=が2日午後、岡谷蚕糸博物館を訪れた。「現存する機械は全国でも数える程度」(同館)という中、動態展示エリアの宮坂製糸所に設置される自身が造った機械と対面を果たすと、生き生きとした表情で調整作業をしながら「感無量だね」と喜んだ。
 岡本さんの父が創業したという「岡本生糸検査機械工作所」は、1960年ごろから製糸業に関わる検査機械の製造を始め、業界衰退のあおりもあって20年ほど前に廃業した。息子の龍彦さん(55)=同=が仕事の関係で岡谷を訪れた際、「もしかしたら機械が残っているかも」と同館に立ち寄ったことが来館の切っ掛けとなった。
 セリプレーン検査は生糸の糸むら、節などを見て主に米国などへ輸出する際の格付けに検査所で使われ、各製糸工場では工女の給料に関わった。蚕糸博物館の高林千幸館長によると、もとは外貨獲得のための輸出用検査だったため、高度経済成長による内需の拡大で逆に生糸を輸入するようになると、いつしか検査は行われなくなったという。
 同館が収蔵する機械は、1971年製。生糸の検査が現地で行われるようになった現代でも勇さんが造った機械は海外で活躍しているという。廃業以来という自作の機械を見た勇さんは「40年以上たった今でも動くということは、自分の仕事は間違っていなかったのかな」と笑顔を見せた。
 高林館長は「岡本生糸検査機械工作所は、製糸業の検査部門では日本をリードした」と振り返りつつ、「その機械を造っていた方とこうして会えて、当時の話を聞けるという機会はめったにない。館にとっても良い資料になると思う」と来館に感謝していた。
(写真は、自身が製作した機械の調子を確かめる岡本さん=中央)