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諏訪湖の水質リアルタイムで把握 産学官で実証実験

2018年8月7日

ネットニュースI実証実験

 モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)を活用して地域の課題解決を目指す、諏訪市の産学官共同事業「Suwa Smart Society5・0」(SSS5・0)が、諏訪湖の水質をリアルタイムで把握できる仕組みを開発し、6日から実証実験を始めた。水質観測の効率化を図るとともに、まちのスマート化や活性化に向けてIoT技術の用途拡大につなげる。
  SSS5・0は、最先端の情報技術を用いて、人材不足や高齢化社会といった諏訪地域の課題解決を目指す取り組み。水質調査はプロジェクトの第1弾で、諏訪市や信州大学、諏訪湖漁業協同組合、市内外の企業5社が連携して取り組んだ。
 装置は縦、横、高さともに約1メートルで、諏訪市湖南の金型成形業「旭」(増澤久臣社長)が製作。湖心の水面下50センチに設置したセンサーで水中の酸素量や水温、濁度を計測し、携帯電話回線でクラウドシステム(IoT基盤)に電送する。データは専用のサイトで一般にも公開し、1時間ごと更新する。サイトは、手元のスマートフォンやタブレット端末でも見られる。
 増澤社長によると、データを電送できる装置は既にあるが、特注品が使われているため高額で、限られた人しか使えなかったという。今回の装置では、市販の部材やセンサーを積極的に使って低コスト化を実現。ホームセンターで買える鉄パイプで本体を組み上げ、送信機やマイコンなどの収納部には、市販のクーラーボックスを活用した。
 電源は太陽光パネルで、搭載した蓄電池で夜間でも観測とデータ送信が可能。今回は試作機1台での定点観測だが、多点観測も視野に、既存装置の半分程度の価格を目指す。
 諏訪湖では信大も定期的に水質を観測しているが、月に1回程度、湖上にデータを回収しに行く必要があった。プロジェクトに参加する信大の関係者は「1時間ごと観測データを得られることで、水質の変化が点ではなく線で見られるようになり、課題の原因究明や対策につながる」と期待する。
 実験は厳冬期を除いて一定期間続け、同装置と信大の観測データの整合性を検証する。装置の製作を担当した旭の北澤敏明会長は「諏訪地域の財産の諏訪湖の問題をIoTで解決し、諏訪全域の観光や医療、介護にも同技術を広げていきたい」と意気込みを語った。 
 (写真はIoTを活用した水質調査の実証実験に向け、装置を準備する旭の増澤社長)