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伊那市創造館で終戦直後の「黒塗り掛図」初公開

2018年8月16日

HP黒塗り掛図
 伊那市創造館は開催中の第21回企画展、明治150年記念「学校のはじまり、はじめて博覧会」で、終戦直後に使われた「黒塗り掛図」を初公開している。戦中戦後の学校教育の様子が分かる貴重な資料で、来館者の注目を集めている。来年1月31日(木)まで。
 黒塗り掛図は、戦時中に製作・販売された掛図を、終戦後も使うために不都合な場所に墨を塗ったもの。同館が展示の準備をする中で、高遠町歴史博物館に所蔵されていた黒塗り掛図を発見し、旧河南小学校(高遠町)で使われていたものであることが分かった。
 掛図は「新撰地理掛図」シリーズの中の「日本及関東地方之部」「アフリカ・南北アメリカ及大洋洲之部」など。世界地図の日本の部分が墨で消されていたり、風景と思われる部分が大きく塗りつぶされていたりする。学芸員の男性(41)は「教材としての掛図は学校に一式、準備されているもので数は少なく、終戦直後に使われた黒塗り掛図が残存することは非常にまれであると考えられる。戦後の新しい教育に向けて、先生たちの熱意が感じられる」と話す。
 見つかった地理掛図は9点で、このうち5点を展示した。高遠町歴史博物館は保管のみで、展示公開するのは今回初めてとなる。
 企画展は、日本の教育の基礎となった江戸時代の「藩校」「寺子屋」から、明治の新しい教育ができていく過程などを、新発見・初公開の資料などからひもといている。戦勝国の意向により、教科書中の戦時色や神道色が強い内容の部分を子どもたちが自ら、墨を塗ったりページを破ったりした「黒塗り教科書」も展示した。寺子屋再現コーナーや、レトロオルガンの弾き比べコーナーなどもあり来館者は興味深そうに見入っていた。
(写真は、展示されている「黒塗り掛図」)