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我が娘と共に生きる 三澤智行さん

2018年6月29日

HP用ブドウ三澤さん
我が娘と共に生きる
 三澤智行さん 岡谷産ブドウ栽培ワインに
  障害者や地域の人ら集まる畑に

 岡谷市川岸中の三澤智行さん(56)は2017年、岡谷産のブドウだけを使ったワインを初めて完成させた。今月には2回目の製品が出来上がり、7月中旬から販売を始める予定だ。自宅近くの荒廃農地を一から開墾することからスタートし、6年目。地道な努力の背景には、障害がある長女への思いがあった。
 川岸中2、新倉薬師堂近くの畑。真っすぐに立った支柱とそこに張られたワイヤに支えられ、ブドウの木が均整に並ぶ。13年秋に、2品種の苗木40本を初めて植えた。山側の木を伐採して畑を広げ、現在は約0・8㌶に8品種1500本余りが育つ。
 切っ掛けは、娘の生活を考えたことだった。「自立するために関われる場をつくりたい」。畑での農作業、瓶へのラベル貼り、梱包(こんぽう)作業といったワイン造りに関わるさまざまな工程に着目。「興味が湧くものがどこかにあるはず」と考えた。
 日が長い時期は、午前4時半から同7時ごろまで畑でブドウと向き合う。枝切りや草刈り、消毒、芽かき、実への傘掛けなど作業は多岐にわたる。12年から妻と2人で始めた介護タクシー事業と並行するが、「やりたい、やろうと決めたこと。苦労とは思わない」。
 障害者だけではなく、ブドウ畑をさまざまな人が集まる地域拠点に育てる目標も出てきた。「お年寄りが来て話したり、農作業をしたりして健康づくりをする。ワイン造りで地域経済の発展にもつながる」と、福祉と農業、地域活性化の連携を思い描く。
 17年に収穫した約100キロを、伊那市のワイナリーで委託醸造。2回目の今回は昨年に続き赤と、初挑戦した白の計160本になった。ブドウ栽培を通じて出会った市内の生産者からリンゴを買い、新たにシードルも190本造った。
 「地元だからできる」と三澤さん。畑を貸してくれたのは、幼い頃から知る近隣住民だった。目標は小宮御柱祭でワインを振る舞うこと。いずれは醸造も手掛けるつもりで、「そのためには収穫を少しずつ増やす」。ことしの収穫量は昨年よりも増える見込みだ。
 
 写真=真剣な面持ちで、ブドウの木と向き合う三澤さん